ブログ 美術館だより
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今からちょうど4ヶ月前の、5月19日に当館で開かれた『今井画伯を語る会』。
その時にご出席下さった臼田さかえさんのお話(抜粋)です。臼田さんは東北芸術工科大学の大学院修士課程で「こども芸術教育研究」領域を専攻されている方です。
「今井画伯の絵の魅力
~21世紀の絵画のあり方を色彩に込めた孤高の人~」
私は愛知県立芸術大学でグラフィックデザインを学び、4年間それを生かしてメーカーの中で企画・宣伝の仕事をしていました。でも広告を作っても、それを受け取る相手とは直接出会うことはありません。それで「美術を通して直接人と関わる仕事がしたい」と思うようになり、シュタイナー教育と出会いました。この教育では、三原色の水彩画が幼児期から導入されていて、その絵画法を含め、シュタイナー教育の教員養成を受けるため、27歳でドイツに渡り5年ほど学んできました。留学当時はドイツだけでなく、パリやロンドン、イタリア各地の美術館や教会にも行きました。帰国してからも何度かヨーロッパを旅し、各地の美術館を見て回りました。たくさんの美術館で本物の芸術に触れていくうち、自分が好きな絵や画家と出会うことが出来るようになったのですが、そんな私が心惹かれたのが今井画伯の絵画です。
今井先生はご自身の絵の中に、鮮やかな色彩世界を展開しておられます。青い色の広がる画面からは、この赤い色のつよい印象の絵とは違う響きを感じませんか?それぞれの色にはその色特有の音というか、響きがあるように思います。これは人間の感情の色合い、喜びや悲しみの色合いの違いといえるものかもしれません。
しかし人間の感情は単純なものではありません。うれしいけれどちょっぴり悲しいとか、苦しいけれど希望があるとか、とても単純な色合いとはいえません。微妙にいろいろな感情が混じり合い、色が複雑に混じり合っているような重層的な響きを持っています。今井画伯の絵の中の人物も動物も、そのような人間の感情世界を表現しているように思います。
はじめてこの美術館に足を踏み入れたときに感じたのは、そういう色が音になって響き合っている、まるで色彩の音楽が聞こえるような感じでした。今井画伯が表現しようとしていたのは、色彩の持つ力そのもの、見るものを生き生きとさせてくれる色彩の魅力なのではないか。様々な色彩が、それぞれの音を響かせていて、それが互いに響きあって和音を作り、メロディを奏で、音楽になっていく、そういう絵画なのではないか。そして作品を見る私たちに元気と勇気を与えてくれる、そういう絵画を、表現を、今井先生は求め続けておられたのだと、昨年初めてこの美術館に足を踏み入れたとき、私は感じたのです。
先生が求めていたのは、21世紀の絵画だった。明るく豊かな色彩の中に、命をはぐくむ力を、未来を生きる希望を、表現しようとしていたのだ、と。